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山口 義仁; 真野 晃宏; Li, Y.
Transactions of the 27th International Conference on Structural Mechanics in Reactor Technology (SMiRT 27) (Internet), 10 Pages, 2024/03
加圧水型原子炉の重要機器の構成要素である蒸気発生器(SG)伝熱管では、経年劣化による局部減肉が報告されている。確率論的リスク評価やリスク情報を活用した意思決定に資するため、減肉の存在が確認された場合の伝熱管の破損確率の増加を評価する必要がある。また、SG伝熱管の破損確率を計算するためには、減肉を有する伝熱管の破裂圧力を評価する手法が必要である。本研究では、国内及び米国の破裂試験結果に基づき、減肉を有するSG伝熱管を対象とした既存の破裂圧力評価手法を改良し、精度の向上を図った。また、改良した破裂圧力評価手法を用いて減肉寸法を変えながら、通常運転から過渡条件における破損確率を算出し、減肉寸法と破損確率の関係を定量的に求めた。本論文では、上記破裂圧力評価手法の改良及び改良した破裂圧力評価手法を用いて算出した破損確率について報告する。
植木 太郎
Proceedings of 12th International Conference on Nuclear Criticality Safety (ICNC2023) (Internet), 9 Pages, 2023/10
モンテカルロ法ソルバーSolomonは、C++14標準で記述されたオブジェクト指向の中性子輸送計算コードである。Solomonは、通常の臨界安全解析機能と乱雑化媒質の臨界性評価機能で構成されており、後者に関して、不完全確率的乱雑化ワイエルシュトラス関数(IRWF)による乱雑化媒質のクラスが装備されている。このため、乱雑化媒質の臨界性揺らぎを、多数のIRWFレプリカを生成して、レプリカ毎に臨界計算を実施することにより評価できる。一方で、必要とされるIRWFレプリカ数を事前に知ることは不可能である。この問題への対処のため、Solomonに、乱雑化増幅機能を装備した。具体的には、オン-オフ型への有界増幅をIRWFレプリカに適用することにより、中性子実効増倍率の上限値推定に関して、レプリカ生成数の95%以上の削減が可能となる。また、Solomonには、ボクセル重ね合わせ機能も装備されている。この機能の有望な応用として、ステンレス鋼(SUS304)中の鉄同位体による共鳴吸収反応の評価例を示す。
二神 敏; 山野 秀将; 栗坂 健一; 氏田 博士*
Proceedings of proceedings of PSAM 2023 Topical Conference AI & Risk Analysis for Probabilistic Safety/Security Assessment & Management, 8 Pages, 2023/10
原子力発電所のPRAの効率的・効果的な社会実装を目指したイノベーションを創出するため、AI,デジタル化技術を活用して、運転時のPRAにおけるフォルトツリー(FT)作成、及び信頼性データベース構築に着目してAIツールを開発する。本報では、AIツールの開発計画とFT自動作成ツールの開発状況について報告する。
多田 健一; 遠藤 知弘*
EPJ Web of Conferences, 284, p.14013_1 - 14013_4, 2023/05
被引用回数:0 パーセンタイル:0.21(Nuclear Science & Technology)高速炉及び中速炉では非分離共鳴領域の自己遮蔽効果の影響が大きくなる。確率テーブル法は連続エネルギーモンテカルロ計算コードで非分離共鳴領域の自己遮蔽効果を取り扱う手法として広く利用されている。本手法では、各核種の与えられたエネルギー点において、断面積の確率分布のテーブルを計算している。確率テーブルは、ラダーと呼ばれる疑似共鳴構造を何度も作成し、その平均から計算している。多くの核データ処理コードではこのラダーを作成する回数が入力値として必要となっているが、最適なラダー数は今まで検討されていなかった。以前の著者の研究から、最適なラダー数は核種や平均共鳴パラメータに依存することが分かっている。このことから、核データ処理コードユーザー自身が最適なラダー数を見つけることは困難である。そこで本研究では、確率テーブル生成における統計的不確かさを計算する手法を開発した。開発した手法では、中心極限定理を用いて確率テーブルと平均全断面積の積の統計的不確かさを計算する。
菊地 紀宏; 森 健郎; 岡島 智史; 田中 正暁; 宮崎 真之
Proceedings of 30th International Conference on Nuclear Engineering (ICONE30) (Internet), 8 Pages, 2023/05
原子力機構ではAI支援型革新炉ライフサイクル最適化手法(ARKADIA)を開発している。その一部として、ナトリウム冷却高速炉(SFR)を含む先進原子炉プラントでの設計最適化プロセスを支援するツール(ARKADIA-Design)の整備を進めている。われわれはSFRの機器構造の設計最適化プロセスの構築を行っている。本論文では、設計最適化プロセスの概要、プロセスにおける評価手法の概要紹介、実現可能性の検討のために実施した最適化プロセスのデモンストレーションの結果について示す。原子炉構造の設計最適化において、SFRの代表的な課題として熱過渡と地震動を考慮した代表例題に基づき、最適化プロセスの開発を行っている。本最適化プロセスでは、異なるメカニズムによる破損に対する荷重の寄与率を比べるため、最適化の目的関数の要素として破損確率を用いた。デモンストレーションを通じて、開発中の最適化プロセスが代表例題に対して最適解を提示する見通しを得た。
高見澤 悠; Lu, K.; 勝山 仁哉; 眞崎 浩一*; 宮本 裕平*; Li, Y.
JAEA-Data/Code 2022-006, 221 Pages, 2023/02
原子炉圧力容器(RPV: Reactor Pressure Vessel)は原子炉冷却材圧力バウンダリを構成する重要機器の1つであり、中性子照射等に伴う高経年化を考慮した構造健全性確保が極めて重要である。国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(JAEA: Japan Atomic Energy Agency)では、RPVの構造健全性評価に関する研究の一環として、確率論的破壊力学(PFM: Probabilistic Fracture Mechanics)解析コードPASCAL(PFM Analysis of Structural Components in Aging LWR)の開発を進めている。本コードは、加圧水型軽水炉(PWR: Pressurized Water Reactor)及び沸騰水型軽水炉(BWR: Boiling Water Reactor)を対象に、影響因子が持つ不確実さを考慮し、加圧熱衝撃(PTS: Pressurized Thermal Shock)事象や低温過圧事象(LTOP: Low-Temperature Over Pressure)等の過渡によるRPVの炉心領域部の破損確率や破損頻度を求めるものである。破壊力学や確率論的計算手法等に関する最新知見や国内RPVに適した評価手法・評価モデルを踏まえ、新規解析機能の導入を進めるとともに、系統的なコード検証活動を通じて信頼性向上を図ってきた。平成12年度に公開したPASCALでは、PWRのPTS事象を対象に、RPVの破損確率を解析する基本的な枠組みを整備した。平成18年度に公開したPASCAL2では、内部亀裂の評価手法や様々な非破壊検査による亀裂の検出性に関する評価モデル等を導入し、過渡事象データベースを整備した。平成22年度に公開したPASCAL3では、肉盛溶接クラッド部に着目して、亀裂の評価機能等を改良した。平成29年度に公開したPASCAL4では、応力拡大係数解や破壊靭性の不確実さを考慮した評価モデル等の改良により解析機能の高度化を図るとともに、影響因子の不確実さを認識論的不確実さと偶然的不確実さに分類し、不確実さを考慮した信頼度評価機能等を整備した。平成30年度以降は、これまでPWRのPTS事象を対象としたRPV内面側亀裂の評価機能に加えて、BWRの起動事象、LTOP事象等を想定したRPV外面側亀裂の評価機能等の整備を進めてきた。これらの機能整備を踏まえ、国内PWR及びBWRのRPVを対象とした確率論的健全性評価に資する解析コードとして、PASCAL5へとバージョンアップした。PASCAL5はPFM解析モジュールであるPASCAL-RV、PASCAL-RVの入力データの生成やRPV炉心領域部を対象とした破損頻度の算出を行うモジュールであるPASCAL-Manager、付録として附属する簡易的な熱応力解析を
山口 義仁; 西田 明美; Li, Y.
Proceedings of ASME 2022 Pressure Vessels and Piping Conference (PVP 2022) (Internet), 7 Pages, 2022/07
原子力発電所おける配管減肉は重要な経年劣化事象の一つである。また近年、日本のいくつかの原子力発電所は大きな地震を経験している。そのため、長期間運転した原子力発電所を対象とした地震を起因とした確率論的リスク評価において、減肉と地震による応答応力の両方を考慮した配管系の地震フラジリティ評価が、重要となっている。本研究では、原子力機構が開発した減肉配管を対象とした破損確率解析コードPASCAL-ECに、減肉配管の地震応答応力の算出モデルや減肉配管の破壊評価法など、減肉配管の地震フラジリティを評価可能とする機能を導入した。また、整備した解析コードを用いて、地震フラジリティの評価事例を整備した。
山口 義仁; Li, Y.
配管技術, 63(12), p.22 - 27, 2021/10
東京電力福島第一原子力発電所の事故の教訓を踏まえ、原子力発電所に対する地震を起因とした確率論的リスク評価(PRA: Probabilistic Risk Assessment)やリスク情報の活用が重要となっている。地震PRAでは、安全上重要な機器や配管などの地震による損傷確率を考慮して、炉心損傷頻度などが求められる。長期間使用された配管では、経年劣化による亀裂などの発生があり得る。亀裂が発生すれば、配管の破壊強度が低減され、地震時の損傷確率が上昇することとなる。そのため、長期間運転された原子炉を対象に地震PRAを実施する際には、経年劣化が機器の損傷確率に及ぼす影響を考慮することが重要である。著者らは、経年劣化の影響に加えて、地震による亀裂進展や破壊を考慮することで、長期間使用された原子炉配管の損傷確率を算出できる解析コードを開発し、妥当性の確認を経て公開した。また、地震による損傷確率を求めるための手順や推奨される手法やモデル,技術的根拠などを取りまとめた評価要領を世界に先駆けて整備し公開した。本論文では、開発した解析コード及び評価要領について説明する。
山口 義仁; 勝山 仁哉; 眞崎 浩一*; Li, Y.
Proceedings of ASME 2021 Pressure Vessels and Piping Conference (PVP 2021) (Internet), 9 Pages, 2021/07
地震を起因とした確率論的リスク評価は、原子力発電所の耐震安全性を評価するための重要な手法の一つである。この評価では、地震ハザード,地震フラジリティ及び事故シーケンス評価から炉心損傷頻度が求められる。地震フラジリティ評価に着目すると、亀裂や減肉が発生している経年配管に対する評価には、確率論的破壊力学を適用した評価手法が有効であると考えられる。本研究では、長期間運転した原子力発電所を対象とした確率論的リスク評価手法の高度化を目的に、経年劣化事象を考慮した原子力発電所の代表的な配管系を対象とした地震フラジリティ評価に関する評価要領を整備した。本論文では、評価要領の概要と、評価要領に基づき確率論的破壊力学解析コードを用いた地震フラジリティ評価事例を紹介する。
山口 義仁; 勝山 仁哉; 眞崎 浩一*; Li, Y.
JAEA-Research 2020-017, 80 Pages, 2021/02
国内では、安全性向上評価に関する運用ガイドが施行されている。原子力発電所の地震に対する安全性を評価する手法の一つとして、地震を起因とした確率論的リスク評価(地震PRA)がある。この評価では、地震動の作用に対して建屋や機器が損傷する確率である地震フラジリティ、任意の地震動強さとその強さを超過する頻度との関係である地震ハザード及び事故シーケンスから炉心損傷頻度等が求められる。日本原子力学会が定める地震PRAに関する実施基準では、原子力発電所の長期運転により経年劣化事象を無視できない場合、経年劣化事象による地震応答特性の変化又は耐力の低下を考慮して機器等の地震フラジリティを評価することとなっている。この評価において、原子力発電所の長期運転による亀裂又は配管減肉の発生及び進展が確認されている経年配管を対象とする場合は、確率論的破壊力学(PFM)は有力な評価技術である。長期運転された原子力発電所を対象に地震PRAの高度化を図るために、ここで代表的な配管や部位等を対象に、経年劣化事象を考慮した地震フラジリティ評価のための要領を取りまとめた。本評価要領の目的は、破壊力学等の知見を有する地震フラジリティ評価担当者が、本評価要領を参照しながら、別途公開する亀裂を有する経年配管を対象とした地震フラジリティ評価が可能なPFM解析コードPASCAL-SP及び配管減肉を有する経年配管を対象とした地震フラジリティ評価が可能な確率論的解析コードPASCAL-ECを用いることによって、経年配管に対する地震フラジリティ評価を実施できることである。
山口 義仁; 真野 晃宏; 勝山 仁哉; 眞崎 浩一*; 宮本 裕平*; Li, Y.
JAEA-Data/Code 2020-021, 176 Pages, 2021/02
日本原子力研究開発機構では、軽水炉機器の構造健全性評価及び耐震安全性評価に関する研究の一環として、原子炉配管を対象とした確率論的破壊力学(PFM: Probabilistic Fracture Mechanics)解析コードPASCAL-SP(PFM Analysis of Structural Components in Aging LWR - Stress Corrosion Cracking at Welded Joints of Piping)の開発を進めてきた。初版は2010年に公開され、その後もより実用性の高いPFM解析の実現を目的として、最新知見を踏まえて解析対象の拡充や解析手法の高度化等を実施してきた。今般、その成果を反映し、バージョン2.0として公開することとした。最新版では、解析対象の経年劣化事象として、ニッケル合金の加圧水型原子炉一次系水質環境中の応力腐食割れ、ニッケル合金の沸騰水型原子炉環境中の応力腐食割れ、二相ステンレス鋼における熱時効等を新たに加えたほか、最新の応力拡大係数解の導入や溶接残留応力の不確実さ等の評価機能の高度化を行い、より適用範囲が広く信頼性が高い配管の破損確率評価を可能とした。また、経年配管の耐震安全性評価の高度化に資することを目的に、巨大地震を想定した大きな地震応答応力に対応した亀裂進展量評価手法等を導入し、地震フラジリティ評価を可能とした。さらに、確率論的評価に係る影響因子の不確実さを認識論的不確実さと偶然的不確実さに分類し、これらの不確実さを考慮して配管の破損確率の信頼度を評価する機能及びモジュールを新たに整備した。本報告書は、バージョン2.0としてPASCAL-SP2の使用方法及び解析手法をまとめたものである。
Li, Y.; 廣田 貴俊*; 板橋 遊*; 山本 真人*; 関東 康祐*; 鈴木 雅秀*; 宮本 裕平*
JAEA-Review 2020-011, 130 Pages, 2020/09
日本原子力研究開発機構(以下「原子力機構」という。)では、原子炉圧力容器(Reactor Pressure Vessel、以下「RPV」という。)の構造健全性評価手法の高度化を目的として、加圧熱衝撃等の過渡事象が発生した場合のRPVの破損確率や破損頻度を評価する確率論的破壊力学解析コードPASCALを開発し、最新知見に基づきその機能の高度化を進めてきた。RPVの構造健全性評価において確率論的手法の活用が期待される中で、RPVの健全性評価に係る取組みを促進するためには、複数の機関によりPASCALの機能確認を実施し、その確認過程や確認結果を取りまとめておくことにより、コードの信頼性を向上させることが不可欠である。こうした背景を踏まえ、原子力機構では開発機関以外の当該分野に関する専門家の下で、本コードの信頼性を向上させることを目的として、PASCAL信頼性向上ワーキンググループを設立し、PASCALのソースコードレベルの確認を含む機能確認を行ってきた。本報は、PASCAL信頼性向上ワーキンググループの平成28及び29年度における活動内容及び活動結果についてまとめたものである。
勝山 仁哉; 宮本 裕平*; Lu, K.; 真野 晃宏; Li, Y.
Proceedings of ASME 2020 Pressure Vessels and Piping Conference (PVP 2020) (Internet), 8 Pages, 2020/08
原子力機構では、中性子照射脆化及び加圧熱衝撃事象等の過渡事象を考慮し、原子炉圧力容器(RPV)の破損頻度を算出するための確率的破壊力学(PFM)解析コードPASCAL4の開発を進めている。亀裂のサイズや密度等の欠陥分布は、PFM解析の破損頻度を算出する上で重要な影響因子であることがよく知られている。NUREG-2163では、非破壊検査(NDI)の結果を反映するベイズ更新手法が提案されているが、NDIにより欠陥指示がある場合にのみ適用可能である。RPVの検査結果として欠陥指示がない場合があることから、我々は以前、NDIの結果として欠陥指示がある場合とない場合の両方に適用可能な尤度関数を提案した。しかし、これらのベイズ更新手法では、両者に相関のあると考えられる亀裂のサイズと密度を独立に更新する尤度関数が適用されている。本研究では、尤度関数をさらに改善し、亀裂のサイズと密度を同時に更新できるようにした。また、その尤度関数に基づきベイズ更新及びPFM解析を行い、その有用性を示した。
丸山 結; 喜多 利亘*; 倉本 孝弘*
日本原子力学会誌ATOMO, 62(6), p.328 - 333, 2020/06
発電用原子炉施設, 核燃料施設などの原子力関連施設の安全確保において、確率論的リスク評価(PRA)が重要な役割を担っている。PRAより得られる様々な知見や情報が原子力関連施設の運用に関する意思決定に有用であり、自主的安全性向上活動、新検査制度などにおいて、PRAより得られるリスクの活用もなされている。一方で、PRAの評価技術についても、日本原子力学会標準委員会において、PRA手法を中心とした標準(実施基準)の整備を行うなど段階的に進展している。こういった背景の中で、「よくわかるPRA; うまくリスクを使えるために」と題する連載講座を本稿から7回にわたって開講する。第1回は、原子炉施設及び核燃料施設を対象に、内的事象及び外的事象、レベル1, レベル2及びレベル3、各運転状態(通常運転時や停止時)に対するPRAについて、技術の現状及び応用例、今後の技術課題や研究・開発の方向性について概説する。
植木 太郎
Nuclear Science and Engineering, 194(6), p.422 - 432, 2020/06
被引用回数:0 パーセンタイル:0.01(Nuclear Science & Technology)モンテカルロ臨界計算におけるタリー平均値の分布収束は、自己相関係数減衰の観点から判定可能である。ただし、大きなラグ(世代差)での統計量の不確かさは大きく、標本自己相関係数の減衰評価に基づくアプローチは現実的でない。本論文は、この課題に対処するなめの汎用的な解決法を提供する。具体的には、タリーの標準化時系列を、確率微分方程式に基き、ブラウン運動に分布収束する時系列に変換する。ブラウン運動においては、期待値がゼロで差分が独立である。この性質を利用して、タリー平均値の分布収束判定法が構成される。判定基準の閾値は、スペクトル解析により決められる。この判定法の有効性は、極端に強相関な例題と標準的な例題に対して、連続エネルギーモンテカルロ計算により示される。
多田 健一
Proceedings of International Conference on the Physics of Reactors; Transition To A Scalable Nuclear Future (PHYSOR 2020) (USB Flash Drive), 8 Pages, 2020/03
確率テーブルは連続エネルギーモンテカルロ計算コードにおいて非分離共鳴領域の自己遮蔽効果を考慮する手法として広く利用されている。確率テーブルはラダー法を用いて計算される。ラダー法では非分離共鳴領域の平均的な共鳴パラーメータと乱数を用いて疑似的な共鳴構造を多数作ることで、確率テーブルを計算している。確率テーブルはこの疑似的な共鳴構造を作る回数、すなわちラダー数に影響される。このラダー数は断面積ライブラリの作成時間に大きな影響を与えることから、断面積ライブラリ作成時間を低減させるためにはラダー数を出来るだけ少なくすることが重要である。しかし、最適なラダー数の検討は今まで行われていなかった。そこで本研究では、JENDL-4.0の全核種を対象として、最適なラダー数の検討を行った。その結果、ラダー数100で詳細なラダー数を用いた確率テーブルとの差異が十分に小さくなることが分かった。また、確率テーブルの差異が臨界解析に与える影響を評価したところ、確率テーブルの差異が臨界解析に与える影響は小さいことが分かった。
真野 晃宏; 山口 義仁; 勝山 仁哉; Li, Y.
Journal of Nuclear Engineering and Radiation Science, 5(3), p.031505_1 - 031505_8, 2019/07
亀裂を有する原子力構造物の健全性評価には、決定論的な破壊力学に基づく手法が用いられている。一方で、影響因子の不確実性の考慮及び構造物の破損確率の定量評価が可能であるという理由から、確率論的破壊力学(PFM)に基づく手法の実用性が期待されている。原子力機構ではこれまでに、沸騰水型原子炉水質環境中における粒界型応力腐食割れや疲労等の経年事象を考慮した原子力配管の破損確率の評価を目的として、PFM解析コードPASCAL-SPの開発を進めてきた。近年国内では加圧水型原子炉一次系水質環境中応力腐食割れ(PWSCC)に起因する亀裂がニッケル合金溶接部において確認されていることを踏まえ、その構造健全性評価が重要となっている。本論文はPWSCCを考慮した一次系配管の評価を目的として、PASCAL-SPに整備した機能について示すものである。PWSCCに関連する確率論的評価モデルとして、亀裂の発生、進展、貫通亀裂からの漏えい量の評価及び非破壊検査による亀裂の検出等のモデルを整備した。また、解析コードによる応力拡大係数の計算精度の向上を図った。評価事例としてPWSCCに起因する周方向及び軸方向亀裂を有するニッケル合金溶接部を対象とした破損確率の評価を示した。加えて、非破壊検査及び漏えいの検知が破損確率に及ぼす影響を評価した。評価結果を踏まえて、改良したPASCAL-SPがPWSCCを考慮した一次系配管の破損確率評価に有用であると結論付けた。
植木 太郎
Nuclear Science and Engineering, 193(7), p.776 - 789, 2019/07
被引用回数:5 パーセンタイル:48.18(Nuclear Science & Technology)相関を伴うモンテカルロ計算タリーの統計誤差を、標準化時系列とブラウン橋の統計を組み合わせて評価できることは、オペレーションズ・リサーチで知られている事実である。本論文では、標準化時系列を確率微分方程式に基づいてブラウン運動に収束する統計量に変換し、統計誤差評価・確率的分布収束の判定を、近似なしで、タリーを格納することなしに実行する手法について報告する。手法の妥当性検証に関しては、強相関下の臨界性問題、原子炉の全炉心計算、動特性パラメータ評価を例として報告する。
岡野 靖; 西野 裕之; 山野 秀将; 栗坂 健一
Proceedings of International Topical Meeting on Probabilistic Safety Assessment and Analysis (PSA 2019), p.274 - 281, 2019/04
ナトリウム冷却高速炉は、大気を崩壊熱の最終除熱源とするため、気象現象が冷却性に影響を及ぼし得る。まれではあるが厳しい外部ハザードが、他の起こり得る外部ハザードと同時に生ずる条件に対し、本研究では、外部ハザードの組合せをスクリーニングする新しい方法を提案した。本研究では、同時または逐次的なハザードの組合せに分類し、ハザードや影響の持続と発生順序の観点から冷却に関連し得る潜在的影響を整理することで、結果として、外部ハザードの重畳により影響が生じるまでのシナリオ進展を特定した。
真辺 健太郎; 松本 雅紀*
Journal of Nuclear Science and Technology, 56(1), p.78 - 86, 2019/01
被引用回数:7 パーセンタイル:61.18(Nuclear Science & Technology)不溶性放射性セシウム粒子が体内に取り込まれると、粒子として体内を移行すると予想される。この場合、溶解性粒子のように無数の放射性核種の挙動を平均的に表現して核種の壊変数を評価する手法を適用することができない。そこで、粒子が体内を確率論的に移行する挙動を模擬する手法を開発し、不溶性粒子の特性を考慮した体内動態モデルを構築した。これにより、セシウム粒子1個の確率論的な体内挙動を考慮して、各組織・臓器における壊変数を評価し、それに基づき内部被ばく線量を評価することが可能となった。この手順を多数回繰り返し、不溶性放射性セシウム粒子の吸入摂取に対する預託等価線量及び預託実効線量の確率密度関数を評価し、その99パーセンタイル値、平均値等を通常のセシウムモデルに基づく評価値と比較した。その結果、摂取粒子数が1個で線量値がごく低い場合は、預託実効線量の99パーセンタイル値は従来モデルによる評価値の約70倍程度となったが、粒子の不溶性に起因する線量の不確かさは預託実効線量が1mSv程度の被ばくレベルでは無視できる程度に小さいことが分かった。